おまけ
「赤葦、人すげえな」
「……」
「これ、各駅に乗り換えじゃなくて、あ、やっぱほら、みんな花火撮ってる」
同級生が自分に話しかけ続けているのに、赤葦の耳に一切入ってこない。
なぜなら、向かいに停車している各駅停車の入り口に、自分のよく知る人物を見つけた、気がするからだ。
確信しているわけじゃないのは、顔がよく見えないこと。
それに加えて、その人物の行動が、突拍子もなかったからだ。
いや、なんであんなことを。
これだけ人がいるのに、いや、みんな花火に釘付けだ。ホームに溢れるほどの人たちはいれど、全員が川の方、それも打ち上げられる花火に目を奪われている。
だからって許される訳じゃない。
「赤葦、どうした? あっち、各駅だろ」
それは、乗り換えないという意思確認で、ひとまず頷いた。
自分の異変に、いや、自分が見ていた人物について、他の誰もが気づかないで欲しいととっさに願ってしまった。
こちらの電車の扉が閉まったときだった。
あ、
の、笑顔。
「なんかあんの? いてっ」
「なんでもない」
つい、クラスメイトの視界を遮ってしまった。
木兎さん、いくらなんでも公共の場です。
赤葦の胸中など相手は知るよしもなく、また赤葦も互いの世界にいる二人に口を挟むすべはなかった。
彼から見た end.