ハニーチ



とあるIFストーリー
バレンタインデー前






、14日って空いてる?」

「14日って、今月?」

「来月!」


来月は2月、ということは、2月14日、バレンタインデー。

急にどうしたのかと思った。


「チョコなくていいからさ、の14日が欲しい」

「それってどういう……?」

「1日いっしょにいたいってこと!」


不意に肩を抱き寄せられ、冬休みに偶然会った後輩たちがわっと騒いだ。


「あの、日向くん、みんな見てるからっ」

「なんで翔陽じゃないの?」

「と、とにかく離れ「いやだ」


「あ、あの俺たちは気にせずに……!」
さん、俺たち何も見てないです!!」

「いや、見てるよね!?」


付き合っているのが公然の事実とはいえ、大っぴらにくっつくのはどうかと思う。

そう思っても翔陽の方はちっとも離れようとしなかった。
いっそこのまま腕の中で顔を隠していたい。

見てないと言い切る後輩たちの視線がよく感じられた。


「ほら、日向くん!」

、返事は?」

「返事?」

「14日、たしか1限だけ授業あるんだよね?」

「あ、うん」


14日の午前はまだ一つだけ授業はあったけど、そのあとはどうとでもなった。

そう話すと、翔陽が『決まり!』と嬉しそうに声を弾ませた。


「14日、なにかあるの?」


一般的に言えばバレンタインデーだけど、そこまで喜ぶほどだったかと不思議に思う。

翔陽はさらっと答えた。


「今年はぜったい二人で過ごそうって、去年からずっと考えてた」

「去年から?」

、去年は部室に手作りクッキー持ってってた」

「あー……よく覚えてるね」

「おれにはなかったから、すげえ覚えてる」

「!それは翔陽が合宿行ってたからだし、受験もあったからで」

「だから、今年は先に予約っ。の14日はおれのっ! いいよね?」

「そりゃもちろん……」


ナチュラルに二人でいるつもりだった。

後輩たちの視線が、熱い。


「ほっほら、翔陽、離れる!」

「えーー」

「えーじゃないっ」


「日向さんの事、さんが名前で呼んでる……」
「そりゃ二人は付き合ってるんだし、そりゃ……!!」
「泣くな、同士よ!!」


すっかり呼び方もいつもに戻ってしまっていた。

もう、やけだ。


「翔陽、いま離れてくんないなら、14日いっしょに過ごさない!」


さすがにこの一言が聞いたのか、翔陽はピシッと姿勢よくして離れてくれた。

なぜか後輩たちも真っ直ぐ姿勢を正していて、昔みたいでちょっと面白かった。


end.