ハニーチ

おまけ




それから数日後。



「夏目さん……、いやっ、夏目先生!!」


呼びかけが日向だとわかっている。

だからこそ彼女は振り向かなかった。


「なんで無視すんだよ!!」

「ムリだから」

「まだ見てないだろ!」

「才能がない」

「こないだより進んだから、みてくれ!このとーり!

 だれでもできるって言ってくれたの、夏目だろ!!」


長くため息をついた彼女。
仕方なく日向が持ってきたカバンの中を覗き込む。

なかには、先日貸した教本と作りかけのプロミスリングが入っていた。

彼女は、もう一度深く息を吸い込んで吐いた。


「日向」

「見てくれる!?」

「才能が、ない」

「それはわかったって!!」

に聞こえます」

「んんっ!!」


教室の中にはがいることは二人とも知っていた。

ほんとに、さ。


「日向って才能ないよ、1年生よりない」

「!!」


日向は何か言いたげに口を動かし、けれど反論できない事実に身悶えるしかなかった。

もひとつ、ため息。

彼女はちょいちょいと人差し指で向こうの教室を示した。


「しゃーないから直々に教えてあげる」

「アザース!!」


もう、買えばいいのに。

そう思いつつ、彼女は今日も日向のプレゼント作戦に付き合った。






、貸し一つね」

「いきなりなに!?」

「そのうちわかる」


彼女は自分の席に戻ってすぐ、にそう告げた。

彼女の手首には冬服の袖に隠れてプロミスリングが一つかかっている。



end.