ハニーチ

とあるポッキーの日





さーーーーん!!!」


とても勢いのある足音が廊下の外でするなと思ったら、扉が開いて、そこには犬岡くんがいた。

クラスの皆も、なんだなんだ、と注目してから、あ、犬岡かって感じで落ちついた。

ご指名が入ったよと友達に背中を押されて犬岡くんの元に行く。


「これ!」

「ポッキーだ」

「そうっ、さん好きだったなって」

「あ、まあ」


お菓子は嫌いじゃない。
素直に受け取ると、犬岡くんがうれしそうに笑った。


「よかった!」

「こっちこそありがとう。でも、どうしたの?」

「学校来る途中でもらって!
俺、自分じゃこういうの食べないからもらうの止そうかと思ったんだけど……、配ってる人に 『好きな子にあげてください』って言われて、それでさんにあげようって!

受け取ってもらえてよかった、あっ!」


いけね、て顔して口元を覆う犬岡くん。

周りも、私も、えっ、という感じで一瞬動きを止めた。

いま、犬岡くん、あの、その。


「えーっと、さんさえよかったら!なんだけど、昼休みさ、一緒に食べない?」


ど、したらいいか、と思いつつ、俯いた。ら、頷いた=イエスと取られたらしい。

犬岡くんが、やった!!!ってクラス中の注目を集めるには十分な声量で喜んだ。



end.