ハニーチ

とあるポッキーの日




「なー、ポッキー好き?」


教室に向かう途中、ふと声のする方を見ればクラスメイトの黒尾の姿。

手には見知ったお菓子の箱。


「好き! くれんの?」

「おー」

「ありがと!!」


さっそく受け取って箱を空けながら、黒尾の隣を歩いた。


「これどうしたの?」

「学校行く途中でもらった」

「誰に!?」

「キャンペーンだとよ」

「いいな!! 私もいま行ったらもらえるかなあ」

「残念ながら朝練組でアウトだそうで」

「早起きは三文の徳……!!」

「ホント好きだね、こーいうの」


黒尾の目も気にせずについポッキーを食べ始めてしまった。いや、なんか、食べたかった。


「ンな銜えてると危なくね?」

「大丈夫、綿菓子の棒じゃないし」


ちょっとくらい手を使わないで食べたって危険はない。

マナーはよくないけど、と思った瞬間だった。近 い。

サクッ! と軽快な音とともにポッキーの半分は攫われてった。


「盗られたりすっから油断すんなー」


黒尾は立ち止まることなくスタスタと先を行く。

ポッキーの食べかけをつい落としてしまった。

え、どうしよ、これ。3秒ルール? 無理か。


さんどしたー? 黒尾がいつもと変わらない声で呼んでくる。待って、いまわたしは混乱している。


end.